「ポール・スミス来日公演」(4)人生で最も大切な個性と努力の話




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「ポール・スミス来日公演」(3)デザインの源になる色彩の見つけ方

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広告を展開している時でも、明るい色彩を使用して作品そのものが目立つように心がけています。
ファッションショーのときには、わずか14分、せいぜい12分ぐらいで強烈なインパクトを見に来てくださっている方に与えなければなりません。
お金もものすごくかかります。
左側は雑誌やプレスの方です。こちらがブティックなどのバイヤーの方々です。ファッションショーは、ほんの数分の勝負です。わずかな時間で、雑誌やプレスやバイヤーの方にも、私が素晴らしいコーディネートをした新しいアイディアを紹介しているという強烈なインパクトを与えなければなりませんし、同時に実際に商品として、売れるものとしてお届けしなければなりません。

数分の中で、2つやらなければならないのです。

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最初に私は金土だけはこだわり抜いた物を売るお店をやっていたとお話ししました。これは、つまりイメージ戦略です。月火水木は、家賃を払うための現実的な生計をたてる日です。金曜日土曜日に当たることでは、マスコミに強烈なイメージを与えます。家賃を払ったりという現実的なところもきっちり抑えていかなければいけませんし、自分のこだわりのイメージを作り上げていくことも大事です。この2つを両立させなければなりません。

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25年、30年くらい前は、まだショップが少なかったので、言ってみれば釣りをしている人が非常に少なかったような状態です。ビジネスチャンスにあふれていました。

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その後徐々にショップの数も増えていって、どんどん競争が激しくなっていって、増える一方です。

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今では、こんなに混み合っています。非常に競争が激しい社会です。
これから卒業していく皆さん。学生のうちに自分の独自の視点というものはどうゆうものか、自分の独自性はどうゆうものかを考えてください。どうやったら大勢の中から自分を雇ってもらえるか、是非そこをじっくり考えてみてください。
そうすれば、釣り人がたくさんいて、非常に込み合ってきても、必ず成功の道が開けるはずです。
先ほど独自性というキーワードを挙げたのを覚えていますか?
そして、個性。コミュニケーション能力。
就職面接に行ったら、面接官の目をしっかり見据えてください。先ほど挙げたキーワードは前向きにしっかりと望むためのカギになってきます。

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そして努力についてお話します。
私はよく、努力そのものはタダだと言います。
皆さん全員に当てはまることですが、努力をすることにはお金は全くかからないのです。にっこり笑って前向きな姿勢で臨む、ただそれだけでいいのです。

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これはイギリスのパブの写真です。このお店はいつも誰も来ません。
非常にありふれた、面白みのないパブだからです。

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道を挟んだところに、このパブがあります。常に満員です。
非常に楽しげな雰囲気だったり、花があったり、努力の跡が見えるからです。この写真は少し前のものですから、今はもっと人を引き付けているかもしれません。
就職の履歴書を書くときに、どうやって自分の履歴書を目立たせるか。その紙の素材にこだわるか、どこまで綿密に調べられるか。そういった努力を惜しまないことこそが勝負のカギを握っているのです。

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並んで立っている2軒の家があります。創造性に富んだ視点から、ちょっと一捻りするだけで、こんなに変わってきます。

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少し難しくなるかもしれませんが、選択肢が多くなるということについてお話ししましょう。

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世界には同じようなものがありふれている、と個人的に思っています。目立たせるための努力が必要だと考えています。

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皆さん全員が八百屋さんだと想像してみてください。同じひとつの通りにお店を構えています。
例えば原宿ではブティックがずらっと並んでいますよね。それと同じです。
皆さんは同じ八百屋ですから、私があちらのお店からではなくこちらのお店のトマトをなぜ買いたいと思うか、それも努力によります。
一捻り考えられるかによって変わってくるのです。
これは雑然と並んでいます。

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こちらは整然と並んでいます。

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トマトを見ていましょう。別にトマトでなくても、CDでも洋服でも何でも構いません。

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ヘタがついていて美味しそう、下に敷いてある紙がきれいだと思いますよね。

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全く同じ商品を扱っていても、違うアレンジの仕方によって成功失敗は紙一重になります。すべてに同じことが言えます。

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ここが私のお店であるとします。皆さんは通りを歩いてきます。
わずか5秒くらいです。どうやってわずか5秒の間にお店の方に向き直らせられるか。ここにも努力が絡んでいます。

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ただマネキンを並べる以上のことをどうやってするかが問題なのです。
特別な雰囲気をどうやって醸し出すことができるか。

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どうやって一瞬で振り向かせることができるか。

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それによって、お客さんをお店に呼び込むことができます。

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ですので、店の例を挙げましたが、皆さんの履歴書にも、試験の解答用紙にも同じことが言えます。注目されるためにはどうすればいいのか、それは、すべて努力と結びついているように思います。

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先ほど雑誌の表紙がずらっと並んだ写真をお見せしましたが、全部非常に似ていたと思います。これは1959年当時の写真です。とても違った雰囲気です。マティスの絵のように見えます。

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こちらは1948年の雑誌です。

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そして1949年。

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非常に斬新で風変りです。
昔のFortune、Vogueなどは、モダンに感じる素晴らしいデザインのものがあります。

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しかし、今の世の中では似通ったものばかりが登場してきてしまっています。

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ファッション関係やグラフィックデザインにかかわる人はこの名前を覚えておいてください。素晴らしいコレクションです。

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アレクセイ・ブロドヴィッチ(Alexey Brodovitch)は、素晴らしいアートディレクターです。

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人と本当に違う視点を持って考えることができる思考回路を持っている人です。

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そして、写真の上にさらに色を重ねて書くという方法を生み出した人でもあります。

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この名前も重要です。
エーウィン・ブーメンフェード(Erwin Blumenfeld)は、20世紀で最も影響力のある写真家の一人です。

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これらの写真には、今日私が話したことがぎっしり詰まっていいます。

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おっとここで時間が来てしまいました。
先ほど紹介した要素の中で最も大事なのは、独自性です。
皆さんの世代では、是非人とは違ったことをできるように努力してみてください。
今日は来てくれてありがとうございました。

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