【対談】エルムのおやじ、最後のぼやき。




いつもと変わらない朝。大学では学期末試験が終わり、学生が存分に羽を伸ばす春休みの真っただ中。
2016年2月25日、「私たちは早稲田で最も愛された」お店の開店前に店に入った。
道を挟んで向かいに立つキッチンミキのおやじと我々は、キッチンエルムのおやじの「最後のぼやき」を今まさに聞こうとしていたのだ。

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キッチンミキ店主の山内康行さんとキッチンエルム店主の山口勝見さん

「うちはこつこつとマイペースにやっているだけだから。」

編集部: 閉店予定日だった20日ごろは大変だったんじゃないですか?

エルム: 1日で200名を超えてんだ。用を足しに行くわけにはいかないから、水ものめなかったし、自分の昼飯も作れなかったよ。本当はひっそりと閉店したかったんだけどね笑
韓国から来たのね。「自分学生の頃は毎日カルボ食べてた」なんて言ってね。何十年もたって顔は変わってるけどよーく見ると昔の面影があったりしてね。嬉しかったよ。

編集部: エルムの親父さんとミキの親父さんから見た早大生の変化は何かありますか?

エルム: 変わっていないですよ。1個もね。うちはマイペースでやっているだけだから。

ミキ: 自分がお見せ始めてから二十二、三年なので、そんな言える立場じゃないけど、前に比べると真面目な学生が増えてきている感じがする。昔はあんまり授業に出ていなかったけど、授業に出たりしている。

エルム: うちはいつもマイペースでお店やってるだけだから。座っているのを見ているだけだから全然わからない。

編集部: 2回お店移転されているのはどうしてですか?

エルム: 高田馬場駅の前に今はうどん屋か何かの大きいビルがあってね。昔はそこに多くの個人経営のお店があったでしょ。でも、年取ってきてだんだんやらなくなってきちゃうの。だから、大きい店1つとか2つとかになっちゃったんだよね。その頃からこっちに学生さんが多かったから、こっち来ちゃったんだよ。

編集部: 確か最初に移転したお店は成文堂の上でしたよね。

エルム: 成文堂の横の今黒いビルが建っているところに稲門堂って本屋があったのね。その2階で15、16年ぐらいやってたの。その頃は1日に180人くらい入っていたんだけどね。潰れちゃって、稲門堂が。ビルを建て替えることになって、こっちに移転してきたのよ。

編集部: なるほど。そのときから常連の人とかも多かったんですよね。そこで来られていたお客さんは、今もいらっしゃいますか?

エルム: うん。来ますよ。どっから聞いてきたのか「山口さん、来ちゃったよ」なんて言って。

ミキ: うちも長く続いている店なので、卒業してからきてくれる方も多いです。エルムさんもミキも、ここらへんで長く続いている店は全部そうだと思います。

エルム: 30年前の人が来たよ。50を過ぎたおじさんが来てくれるのもね。何遍も何べんも通ってくれていた子ほど、「あそこでまだやってる」つってこっちまで来てくれるんだ。

「値段上げたり下げたりなんて、めんどくさい。」

編集部: お2人のお店は安く料理を提供されてることで有名ですけど、何か理由のようなものはあるんですか?

ミキ: 理由は単に店があるのが学生街だから。学生の懐事情を考えれば、そんな簡単に値段を上げられないからってことです。うちは、僕が(2代目として)店に入ってからは値段あげていないし、むしろ値段下げてる。40周年の時に550円だったミキランチを500円にしたことがあった。13年前だったかな。それからは値段かわってないよね。エルムさんも、値段上げてないと思うけど。学生のために。

エルム: 学生のためっていうか、めんどくさいからだよ。

編集部: え?変えるのがめんどくさいって事ですか?

エルム: めんどくさい。値段あげたりさげたりしたらね。

ミキ: うちも500円で、エルムさんのカルボなんかは480円じゃない?500円を超えると
、1000円出されたときの計算が大変なんだ。

エルム: 5%から8%?にアップしたとしても関係ないよ。面倒だから値上げはしなかったね。

編集部 山内さんはエルムの掟について知っていましたか?

ミキ: ぼくはちょうど同じ時間に営業しているから来たことはないんだけど、「エルムの掟」についてはお客さんから聞いて知っていましたね。

エルム: 全部1人でやっているから手を伸ばしても皿に手が届かねえんだ。声かけて皿上にあげてもらってて。そこら辺の店は手伝いを雇っているけど、手伝いやとったらな、値上げしなきゃいけないだろ?1人入れたらね、今度狭くて後ろ通れねえし。だからあげたりさげたり頼んだんだよ。

編集部: 辞める理由、キッカケみたいのことってあったんですか?

エルム: きっかけ?そもそもあれだねぇ、もう72だからね。クラス会やっても、だれも働いてねえんだ。よぼよぼになってから辞めるより、元気なうちに辞めたほうがいいだろ?

編集部: 辞めた後のご予定などはありますか?

エルム: なにもないよ。店をたたんだら息子のところに行って、温泉とかクラス会とか行くね。

「うちは回転率がいいんだ。」

ミキ: 率直な質問なんですけど、お店は儲かってましたか?

エルム: 儲かってますよ。うちは。儲かってる。うちは回転がいいから。150人来るね、1日。だから「話しながら食べちゃダメ」って、「しゃべる前に注文」「水を取りに行く前に注文」って「しゃべるのは(料理が)できる前」って言っていたね。学生も女性だってなんだって、食べる前から話すのが多いんだよね。それから、3.4人で来た人が別々なものを頼むと時間がかかるでしょ?だからあとから来た人も同じメニューを頼むようにしてね。お客さんが一緒に食べ始めて、一緒に食べ終わる。それで一緒に帰れる。うちは回転率がすごくよかったよ。

ミキ: うちも狭い店ですから気にはするけど、言ったことはないなあ。うちも回転率は大事だから、昼の間だけ4人席で相席してもらったりはしているけどね。うちは儲かっていないけど、建物を借りているわけじゃなくて買っているから何とかやっていけているぐらい。

エルム: うちも家賃はかかっていない。ここを借りようとしたら「売りです」っていわれて、「いくらですか」って言ったら1780万って言われましてね。即決した。1780万が安いか高いかなんてまったく気にしていなかったね。そんなの分かんねぇ笑
昔はここより広かったから、ワーって来てサークルのみんなで食べようなんて言ってね。

編集部: 店を大きくしようとかもっと広いところに移ろうとかは思わなかったんですか?

エルム: 店をもっと大きくしようと思うと1人ではできなくなるだろ。大きくしたいという気持ちはなかったね。マイペースでやっていこうと。こつこつとマイペースで。

ミキ: うちも店を広くしよう、2階を店舗にしようとか考えたことあるけど、それよりも今あるスペースをどれだけ有効活用しようかって考えていますね。狭くて逃しちゃうお客さんはいるけど、それはそれとして、いかにお客さんに来てもらえるか考えています。

エルム: 広くしたら広くしたらで、うちの良さみたいなものがなくなっちゃうじゃない。

「気を使うな。気を遣わせろ。」

編集部: 大学の食堂が綺麗になっていって、大学生の中で個人経営のお店に行く人が減っているというニュースもあります。

ミキ: うちに来てほしいのは、毎日来てくれるようなお客さん。毎日「昼はミキで」っていうお客さんに来ていただけるとありがたいね。早稲田の学生のいいところは、4年間で卒業しちゃうってこと。1つのお店に何十年も通い詰めてくれるってのは大変なことだけど、早稲田は卒業してしまう学生がいると同時にまた新しい学生が入ってきてくれる。4年間の間に後輩を育ててくれて、お店を紹介された後輩がまた新しい後輩を連れてうちの店に来てくれる。そうゆう「早稲田の伝統」のおかげで、何年も何年のお店を続けてこれたし、これからも是非早稲田の定食屋に後輩を連れてきてほしいと思っています。

最後までフライパンを振り、作り続けていた。

最後までフライパンを振り、作り続けていた。

編集部: 最後に何か、山口さんから山内さんに伝えておきたいことなどありますか。

エルム: 「お客さんに気を使うな。お客さんに気を遣わせろ。」伝えたいことはこれだけです。

ミキ: そうゆうお店になれるといいんですけど笑

エルムさんみたいになれるように、僕は謙虚に頑張っていきたいと思います。

ミキ・編集部: 本当に今までお疲れ様でした。




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