大盛況に終わったポール・スミス氏の来日公演ではあったが、会場の運営体制は非常にずさんだった。問題点は大きく分けて3つあるだろう。
まず、1番大きい点は見通しの甘さだ。
日本でメンズに大きなファンを持っているPaul Smithは、女性にもお洒落なインポートブランドとして認知されている。そのブランドの創立者であり、世界的なデザイナーであるポール・スミス氏の来日公演、一般からの来場制限を設けないとなれば大学内外から人が集まるのは目に見えているはずだった。しかし、予約不要にした挙句、入場料を無料にまでした。これでは、1500人しか入れない早稲田大学の大隈講堂前に入場を求める人々が殺到しても仕方がないだろう。
そして、運営側の人手不足も顕著だった。
20人弱で4000人近い観客をさばききるのは不可能だ。会場の安全を考えて見回りをする係員、観客にパンフレットを配布する係員、屋外誘導も必要だろうし、登壇者のケアに回る係員も必要だ。最低でも30人は必要だったはずなのに、その半分ほどの人数で四苦八苦しながら対処していては、無駄に時間が経ってしまってもやむをえないだろう。
最後の問題は、主催者側が大隈講堂の使い方を熟知していなかったことだ。1回目の講演会で開場する際、主催者側は3つある大隈講堂の扉を全て開けた。これによって我先にと大隈講堂に入場しようとした観客によって通勤ラッシュ並みの大混雑が引き起こされたのである。実際に筆者はその渦の中で身動きが取れなくなっていた一人であったが、後ろの観客から圧力をかけられ、お年寄りの方が悲痛な声をあげる場面もあった。
急遽行われた2回目の講演では、扉を締め切ったうえで順次入場させる工夫をしてはいたが、1回目の講演中に観客を整列させずにずっと扉に押しあっていたのは、観客にとってかなりの負担になったはずだ。
この3点は複雑に絡み合っているが、最も大きな要因であった「こんなに多くのお客さんが来た経験はなかった」という点は、今回で解決されたと言えるだろう。
近いうちにくるであろう大物ゲスト来日公演で、また新たな混乱を引き起こすことがないか。
早稲田大学感性領域総合研究所の真価が問われている。