元サークル員が語る“早稲田で最も危険”なテニサー




※この記事は2016年4月3日に編集部員によって執筆されたものであり、オレンジテニスクラブの現在の実情とは大きく異なります。ご注意ください。

私は大学1年生の新歓時期に12大のテニサー「オレンジテニスクラブ」に入会した。

12大とは、早稲田大学庭球同好会連盟の略で、早稲田大学でもっとも伝統のあるテニスサークル連合である。

私はその12大のテニスサークルに2013年9月ごろまで所属しており、そのサークルの実態について詳細に把握していると確信している。

断っておくが、この記事はそのサークルを糾弾するものでは決してない。
この記事を書いたのは、早大生の間に広まる「12大のサークルはヤリサー」などの誤解を解くためであり、このような独り歩きしている噂をある意味否定するものである。

むしろ、私が入会した某サークルは驚くほど体育会系だったのだ。

※ この記事は筆者の主観的な評価に基づいている可能性があります。記事内容の是非に関してはご自身の判断でお願いします。また、記事内容に関してはつーつーおーる!編集部は責任を負いかねます。

【関連】早稲田のテニサー一覧【徹底解剖】

ダッシュが日常の練習

体育会系と私が言う理由、まず一つ目にメンバー全員が練習中に全力疾走を意識していることだ。
先輩に名前を呼ばれた時には、常に全力で走っていかなければならない。これは1年生だけでなく、2年生や3年生も同様だ。

また練習に途中参加するときは、まずは上級生への挨拶回りをしなければならない。

○○先輩、お疲れ様です。授業で遅れました。すいません。

打ち合っている先輩達の横に回り、このような挨拶をして回るのだ。

集合がかかると全力疾走で集合。次は、上級生のみがコートに入って打ち合う練習だという。新入生は全員、コートの外に四方に散る。そこで、上級生が打ち終わった球を取りに行くのは新入生だ。もちろん例にもれず、全力疾走である。この練習が15分以上続いた日には、受験明けで運動に慣れていない新入生は体がガタガタになること間違いなしだ。

新入生の中でテニスのルールを理解している者は、先輩同士の練習試合で主審や線審を務めることがあるが、ここでも声が小さかったり、はっきりとしないジャッジをする者へは、厳しい叱責が飛んでくる。

そして極めつけは、球拾いである。ここでもダッシュで球を拾うのだが、テニスコートの周りには大抵木が植えてあったり、雑木林が広がっていたりする。その中を走りながら移動し、なおかつテニスボールを探す行為はかなり難しい上に極限まで削り取られた体力をさらに消耗させる。

コートを出るときは、新入生は上級生よりも先に出てはいけない。もちろん新入生はネットの片づけやボール拾いやトンボでのコート整備などを行うが、上級生が帰り支度をしてラケバに荷物を詰めている頃、新入生は待たなくてはならないのである。
そして、厳しい上下関係はコート上だけではなく、更衣室までも持ち込まれる。
新入生は、上級生よりも先に更衣室に入ってはならないし、着替えてはならない。流した汗のにおいを嗅ぎながら、上級生が着替え終わるのを更衣室の外でひたすら待つことになるのである。

上級生「全員」への挨拶は義務

新入生へ上級生「全員」への挨拶が義務付けられるのは、おおむね次の時だ。

①練習で集まった時
②練習に途中から参加するとき
③練習の間どこかで途中で抜けるとき(新入生のみ許される)
④解散時
⑤飲み会開始時
⑥飲み会終了時

つまり、練習においても飲み会においても集まって解散するときには必ず全員に挨拶に行き、自らが来たことを知らせなければならない決まりになっているのだ。これは、上級生にとっては、何度も後輩の名前と顔を覚える機械があるという意味で、合理的な方法ではある。しかし、サークルに入ったばっかりで何十名もいる先輩の名前を覚えておらず、顔も分からない新入生は、悲しいことに2年生の先輩に付き添われて上級生巡りをすることになるのだ。

練習するのはテニスとダンス?

12大テニスサークルとダンスは切り離せない

なぜなら、サークルの名前からとられたいわゆる「○○○○(サークル名)ダンス」は、12大サークルのDNAそのものだからである。
悪口雑言飛び交う12大サークルの公式戦で相手を中傷することで有名になったそのテニスサークルは、同時に相手を挑発するために「○○○○ダンス」を使う。
数種類あるダンスの中で最も有名で、頻繁にみられるものは「勝利ダンス」であり、

「いっしょうめーい、いっしょうめーい、いっしょーめー、v( ̄Д ̄)v いえい」

と大声で叫びながら体を上下に揺らし、手を上下に、対称に振る。
(つまり、右手が上に来ている時には左手は下にくるようになる)

これらのダンスを止めることはできない。
なぜなら、上級生が同じダンスをOBから学んだように、何十年も前から受け継がれてきたダンスだからだ。サークルが強かった上四(12大サークルの中で上位4サークル)時代も、下四(下位4サークル)にサークルが沈み苦しんだ時代も、試合に勝利し、団体戦に勝利してこのダンスを踊ることを目標に厳しい練習を続けていた。
このダンスは、今までの練習が勝利という形になって返ってくることへの喜びそのものなのである。

新入生は、団体戦期間が近づくとこのダンスを上級生(主に新入生担当の2年生)から学ぶことになる。
こうして、12大テニスサークルに染まり、抜けられない体が作られていくのである。

飲み会と同じくらい重要な上級生との食事

強制ではないが、新入生はかなり頻繁に上級生とご飯を食べに行くことを要求される。
そして、ご飯代はほとんど全額上級生が出すのが鉄則だ。

基本的に家族のような付き合いをする12大テニスサークルは、早稲田大学構内にラウンジを持っている。授業が入っていない時間があれば、そこに行って語るのが日常になっているのだ。
もちろん昼飯も一緒に食べる。それに加えて、練習後の食事、雨で練習が中止になった時の食事、OBを呼んでの食事会など、挙げればきりがないくらいだ。12大テニスサークルに入ったら、それ以外の活動に参加する暇がなくなるくらいサークルにどっぷりとつかることになるのである。

「ビール縛り」の飲み会

12大テニスサークルの特殊性は飲み会によく表れている。
まずはその頻度が尋常ではない。週一回は必ずあり、団体戦期間中はほぼ毎回試合後に飲み会が待っている

よく使う居酒屋はロータリー目の前の「だるま 高田馬場店」で、入口入ってすぐ左側手前の一角で飲むことが多い。

例によって「学生注目」から始まる飲み会は、まず幹事長にコールを振って始まる。
幹事長がイッキ飲みを終えると、次は副幹事長、会計、プレマネ、ビギマネというように役職についている幹部に順番にコールを振っていく。そのテニスサークルでは、サークルの上級生一人ひとりに固有の「コール」が割り振られており、新入生はそれを覚え、積極的に「コール」を振ることを要求される。そして、自分のコールを覚えていることに満足を覚えながら、上級生はコップいっぱいに入ったビールを飲みほしていくのである。

そして、何よりも重要なことは、12大テニスサークルの飲み会では「ビール縛り」であるということだ。飲み会では、コップの中にビール以外のアルコールを注ぐのは禁止だ。

なぜなら、飲み会とは強い酒を体の中に入れていかに潰れないか競うものというよりは、コールを振ってゲームをし、楽しむものだという認識がサークル員にあるからだ。だから、焼酎一気飲みなどのキャパギリギリまで攻める事をせず、アルコールを入れつつも程よく酔っ払うような飲み方をするのである。

全く知られてない事だが、12大テニスサークルでの「ビール縛り」はひと味違う。

それは、120分の飲み会で、最初の110分は食べ物を一切食べてはいけないということだ。食べ物が運ばれてくるも、ひたすら無視してビールを飲み続け、飲み会終了10分前になってやっと上級生から食べ物を食べる許可が出されるのだ。上級生になると慣れてくるのか、自分は何も食べずに、新入生に「もっと食べていいぞ」と促す余裕さえ出てくる。

「飲み会は楽しむもの」という理想を地で行くシステムは、まさに飲みサーの象徴とも言っていいだろう。

テニサーの風評被害はすさまじい

私がそのテニスサークルに入ったのは、他のサークルの新歓で後に幹事長を務めることになる上級生に新歓コンパに誘われたからだ。

その新歓コンパでは、幹事長が体をよじりながら「1年生がサークルに入らないと死んでしまう〜」と悶えていたり、新歓なのにコールゲームを積極的にやるスタイルを見せていたり、やっとお酒が飲めるようになった自分には新鮮だった。体育会系のテニスサークルではあるが、深い付き合いをサークル員に要求するスタイルは、一定の需要があるだろう

それなのに、ありもしない「ヤリサー」という噂によって、彼らは大学内で不当な扱いを受けている。このサークルを辞めた私だが、もしこのテニスサークルに行き続け、幹部をつとめていたとしたら、また違った楽しい大学生活を送っていただろうと断言できる

根拠のない噂を信じて、自分のサークル選びをしてしまうことは、楽しい大学生活の可能性を自分から消してしまうことに他ならないのだ。




この記事をシェアしよう!