編集部の1年間とポストバイラルメディア




「つーつーおーる!」創刊編集長のです。いつも「つーつーおーる!」をご覧いただきありがとうございます。

今年の3月をもちまして早稲田大学を卒業して就職することに伴い、編集長を交代することになりました。
私にとって最初で最後の編集部雑記として、これまで1年間の編集部で何があったのか、そしてメディアと「つーつーおーる!」編集部の未来の姿についてこの場を借りまして書かせていただきます。

「つーつーおーる!」編集部のこれまで

大学3年まで様々なサークルで活動してきた私は、同じく早稲田大学に所属していた学生(のちの副編集長)と早稲田生向けのWebメディアをつくることを決意し、2016年の3月にドメイン取得とWebサーバーのレンタルを開始しました。

このとき、2人でどんな記事を書こうかを考えている場所が早稲田大学の22号館だったため、Webメディアの名前は「つーつーおーる!」になりました。

2人でスタートした「つーつーおーる!」でしたが、私はコンテンツの作成とサイトの改善、ソーシャルメディアなどを担当し、副編集長はネタ集めと校閲を担当していました。2人でやっていくのはかなり大変で、1人の時も2人の時も22号館に泊まって記事を書いていました。その後、別のサークルで活動していた5人が合流し、やっと編集部らしい体制になりました。

2016年4月には、早大生が居酒屋で50名の予約を取っておきながらバックレた記事15万アクセスを記録。ワイドショーで取り上げられるなど、早大生のモラルに大きな疑問を投げかけました。

その後、1年にわたり早稲田祭2016運営スタッフ代表へのインタビューやコール特集など編集部独自の目線から早稲田を見た記事を配信し続けました。私や副編集長の就活のせいで更新が途絶えた時期もありましたが、精いっぱいメディアを作り上げてきたつもりです。

そして、現在「つーつーおーる!」のサイトは12万PV/月を超える早稲田大学最大のWebメディアに成長しました。この結果は編集部の全員によって成し遂げられたものであることをここに記しておきます。

バイラルメディアの問題点

さて、メディア界隈で2016年に最も大きく取り上げられたのは、DeNAによる医療系バイラルメディア「WELQ」問題だったことは間違いありません。薬事法に抵触する行為を上場企業が行っていたこと、マニュアル化されたパクリ手法を用いて低コストで記事を量産していたことは間違いなく一線を越えた行為であり、許しがたいことです。
しかし、問題は薬事法やパクリという表面的なことにあるのではなく、もっと根深いものであると思います。

まず考えられるのは、メディアと収益化についての問題です。メディアを用いて収益化を図るには方法は2つしかありません。月額いくらで購読者からお金を徴収する方法と、広告を入れることで広告主からお金を受け取る方法です。

しかし、現在は大小(クオリティもピンからキリまでの)様々なメディアが乱立しており、違いをだすことは非常に難しくなっています。また、インターネットのコンテンツは無料であるべきという考えも根強く、月額いくらでお金を購読するというマネタイズ方法は中小メディアにとっては現実的ではありません。

ここで考えるべきは、マネタイズベースでメディアを考えることの危うさです。ジャーナリズムにはお金がかかります。良質なコンテンツを自ら作り続けるのもお金がかかります。記事をコピペして量産し、広告を入れれば収益化は簡単かもしれませんが、それは価値のない記事の寄せ集めであってメディアではありません
簡単には作り出せない付加価値をつくることこそがメディアの役割であるはずです。

2つ目はメディアのスコープの問題です。DeNA「WELQ」の場合は医療に全く関係ない人がインターネットで調べた情報をもとに記事を書いていました。一般的にバイラルメディアで記事を書いているのは、その分野の専門家ではなく仕事を請け負ったWebライターです。この「スコープを広く定義しすぎること」がWebメディアが専門外のことについて書いてしまう原因の1つではないでしょうか?

自らが知らない領域に手を伸ばすべきではありません。まったく門外漢の人間がコミュニティに入っていこうとすると手痛い失敗を食らいます。元NHKアナウンサーだった堀潤さんは、市民が自らニュースを発信できるツールとして8 bit newsを作りました。市民ジャーナリズムの是非はここでは置いておくとして、最も知っている人が発信するべきであるという考えは正しいように思います

ここ5年間ぐらい一気に盛り上がった「バイラルメディア信仰」はもはや失われました。DeNAは手を引き、CyberAgentは縮小し、LINEのNaverまとめは脱バイラルメディア化を進めています。何年か前に東大生らによってつくられたバイラルメディアを運営するCandle社が高額エグジットした頃のバイラルメディアへの期待はまったくありません。ポストバイラルメディアの時代に入っていると言えるでしょう。

「つーつーおーる!」は何を目指すべきか

「つーつーおーる!」編集部が完全に私の手を離れる前に、創刊編集長としての考えを書かせてください。

まず、「つーつーおーる!」は収益化するべきではありません本当に早稲田が好きで早稲田を変えようと思う人が儲けることを考えずに記事を書けばいいのです。そうすれば、目的が金儲けに変わってしまうことはありません。

そして、「つーつーおーる!」編集部は早稲田大学やその周辺分野以外のことについて書くべきではありません。私たちは早稲田大学に在学しているコンテンツクリエイターとして価値を見出すべきであり、それ以上の価値を求めるべきではないのです。私たちは不勉強で、知らないことが多い大学生であると謙虚に考えてください。

「つーつーおーる!」編集部は早稲田生が早稲田に関することを書くWebメディアです。「早稲田から世論を動かす」という壮大な目標を掲げてはいますが、早稲田に限定して書いたとしても深い洞察力とクリエイティブな発想さえあれば、「早稲田から世論を動かす」ことは可能だと思います。頭脳で差別化を図ってください

この「つーつーおーる!」が何十年にもわたって続いていくメディアに、そして編集部が多くの優秀な若者達にとってなくてはならない場になることを切に願います。

1年間、本当にありがとうございました。

2017年3月31日
創刊編集長




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