長期休みが終盤に差し掛かり、授業開始が迫る時期は憂鬱であると同時に楽しみでもありますね。
新入生はいよいよ入学ということで期待と不安を胸に抱いていることでしょう。
科目登録も悩みの種です。いわゆる楽単以外に、授業の打線を組む選択肢がないのも寂しいですが、何となく面白そうな授業名で選んだものの、「実はドハマリだった」というのでは元も子もありません。
その一方で、本心のところでは、せっかく授業を受けるのなら、面白くて役立つ内容を受講したいと思う学生も多いのではないでしょうか?
そんな学生の想いを大学側も汲み取るようになったのか、近年、早稲田大学では面白い授業への取り組みが増えているようです。
編集部は、早稲田大学で2016年度開講の『BID(ビジネス・アイデア・デザイン)』でTA(ティーチングアシスタント)を務めた樋口玲央さん(商学部3年)に、学生目線で授業の面白さから授業コンセプトの革新さに至るまでお話を伺いました。
早稲田の授業が物足りない学生へ
まず、新しいコンセプトの授業とは、どういうことですか?
意識の高い授業であるのは間違いありません。でも、それはいわゆる皆さんが想像しているようなものでなくて、もっと大きなレベルの話です。早稲田大学の教育を根本から変えたい。
担当教員である商学学術院 井上達彦教授の「この授業は、伝統的な大学教育への挑戦である。全ての授業を徹底的に調べて、反面教師にした。」という宣言で授業はスタートします。
伝統的な大学教育への挑戦。当たり前ですが、この授業では、レジュメ、出席カード、レポート、期末試験のようなものとは無縁です。
暴れ馬のようにエネルギー溢れる早稲田生が、主体性を持って授業に取り組むにはどうすればいいか。至るところに、学生のスイッチが入る要素が散りばめられていて、よく考え抜かれた授業だと感じます。
大学の授業に失望している学生は、早めに受けた方がいいかもしれません。
大変成長が期待できる授業ですね!授業の仕組みと内容は、具体的にはどうなっていますか?
授業の全体像として、様々なアイデア発想法を学びながら、実際にあったら役立ちそうなビジネスアイデアを発表、それに対して教員や起業家の評価を受ける。これが基本サイクルになります。
BIDでは、授業の仕組み・内容のいずれについても、新鮮さが目立ちます。
まず、授業の仕組みについて。
1回の授業を前半が発表&評価、後半を講義に分割して進行します。前半の発表&評価については、後述しますが、いわゆる一般的なプレゼンテーションとはひと味違います。後半の講義も、全体的にフランクな雰囲気で、座学特有の退屈さ・眠たさは感じません。そして、前半後半どちらも通じてこの授業の肝となるグループワークは、チームを組んで固定のメンバーで行われるので、次第に仲良くなり楽しそうです。
また早稲田では珍しい、学期クウォーターの連続2コマ制を採用しています。短期間で2単位貰えますし、効率性という観点でも申し分ないと思います。
次に、核となる授業内容について。
それぞれ受講生4~5人ごとに、例えば株式会社つーつーコーポレーションのような仮想会社を立ち上げてチームを組みます。特にリーダーは、「社長」と呼ばれるのですから本格的ですね。そして各会社は、グループワークを通じて毎回アイデアを持ち寄り、翌週の授業前半で発表。それを投資家(教員、ゲストスピーカーの社会人など)が魅力的に感じれば、高額で買い取ってもらえる。もちろん、これは仮想通貨で行われることですが、まさにこの取引こそ、この授業がBIDと呼ばれる所以です。
例えば、昨年度の授業では「Note share」という、大学の期末試験前後にノートを貸し借りするマッチングサービスが、高額で入札されていました。
自分のアイデアが、実際にビジネスの最前線で働く社会人にどのような評価を受けるのか。学生でありながら、バイアス無しで評価して貰えるのは貴重な体験だと思います。大半の学生はいずれ社会人になります。単位とアドバイスを貰いながら、その練習を先取りできるのは良い機会だと思います。
ノートの貸し借りサービスは助かりますね(笑)今まで見てきた中で、他にどんなアイデアがありました?
昨年度の授業で、特に評価の高かったアイデアは、「高い画力を持ったイラストレーター」と「文才と発想に長けたシナリオライター」という、売れっ子漫画家に必要な2つの才能をSNS形態のプラットフォームで引き合わせるサービスです。
現状では漫画家として成功するために、1人でその両方の才能を抑えるか、バクマンのように偶然の巡り合わせに頼るしか手段がなく、マッチングサービスとの相性はかなり良いと言えます。
サービスを展開するSNSのマイページに、イラストレーターは自分の作風がわかるカット数枚や、どんなジャンルの漫画を描いてみたいか希望を載せます。一方のシナリオライターは、自分がどのような文章を書くのかあらすじや、イラストレーターにどんなタッチで描いてほしいのか掲載します。
このアイデアは、学生よりも教員やゲストスピーカーの社会人から評価が高かったです。学生目線の評価と、社会人目線のそれが必ずしも一致しないのも、BIDの面白さの1つだと思います。
大学生から社会人へ至る架け橋
画期的なアイデアが次々と出て来ますね!そんな環境の中で受講生の成長はどのような部分で感じますか?
大学で学ぶ知識は、一般的に理論知と呼ばれます。それに対して、生きた知識を実践知と呼びます。もちろん、理論知はそれ自体でも役に立ちますが、実務として活用していくと実践知になります。だから、BIDの授業を通して生きた知識に高めていく。
授業の回数を重ねるにつれて、受講生はどんどん前のめりになります。積極性も加わって、知識や経験に対してどん欲になる。そこで実践知に切り替わるタイミングというか、大きな成長を感じます。
そしてなんといっても、ビジネスアイデアとか難しい部分を超えて、楽しそうな表情でやっている。それが結果として、自身の将来や社会の価値に結び付くって良いことですよね。
樋口さん。本日はお忙しい中ありがとうございました!
以下シラバスと授業紹介動画のリンクを貼っておきます!この春ビジネスマインドを育てたい方は是非!!